パンを焼くのがリハビリになるの? ベーカリーデイの一日

粉をはかる こねる 焼き上がりを待つ その一つひとつが体と頭を使う作業です 港南区上永谷のベーカリーデイで私たちが大切にしている一日をご紹介します
パンを焼く日のベーカリーデイは、お昼前から少しずつ香ばしい匂いがしてきます。
テーブルに粉とはかりが並び、エプロンをつけた皆さんが集まってくる。その日に焼くパンを確かめるところから、午前の作業が始まります。
私たちプチハウスは、横浜市港南区の上永谷で「ベーカリーデイ(Bakeryday)」というデイサービスを運営しています。2025年10月に開いた、定員13名の小さなデイです。
デイサービスでパン作りと聞くと、レクリエーションのひとつだと思われるかもしれません。でも私たちは、パンを焼くこと自体を目的にはしていません。
パンは、作業療法のための道具です。
パンを焼く日の流れに沿って、なぜパン作りがリハビリになるのかをお話しします。
入口に掲げている言葉
入口の大きな幕には「人は作業を通して健康や幸福になる」と書いてあります。日本作業療法士協会が掲げている考え方で、ベーカリーデイの土台です。

作業療法の「作業」は、体操や機能訓練のことだけではありません。料理をする。手紙を書く。花の世話をする。暮らしの中で人が毎日していること、そのすべてが作業です。
年を重ねると、こうした作業から少しずつ離れていきます。台所に立たなくなった。字を書かなくなった。できなくなったのではなく、やる場面がなくなっただけということもあります。
ベーカリーデイは、その「やる場面」をもう一度つくる場所です。真ん中に選んだのが、パン作りでした。
粉をはかるところから もう始まっている
パンを焼く日は、11時半ごろから午前の作業に入ります。
最初は計量です。粉と水をはかりにのせ、数字を読んで合っているかを確かめる。目と手と頭を同時に使う作業で、ここでもう段取りの力を使っています。
次はこねる作業です。生地を押して返して、また押す。腕と肩を大きく使う作業です。座ったままでもできるので、立っているのがつらい方も同じ工程に入れます。
成形で使うのは指先です。丸める。のばす。とじる。手指の細かな動きと集中力が、自然と必要になる作業です。

手が思うように動かない日もあります。そんなときも、私たちが全部を代わりにやってしまうことはしません。できる所はご自身で、むずかしい所だけを一緒に。この分け方が、暮らしの力を保つことにつながると考えています。
待つ時間にも意味がある
生地を休ませている間は、手が空きます。その時間は、おしゃべりの時間です。
昔うちでパンを焼いていた話。子どもにおやつを作ってあげた話。パンという題材は、昔の記憶を引き出す力が強いようです。思い出を言葉にすること自体が、頭を使う作業になっています。
ベーカリーデイには、日記を書く時間もあります。その日に何を焼いたか、どんな話をしたかを書き残す。手を動かして言葉にすることで、記憶の整理と気持ちの落ち着きにつながります。
焼き上がりは その日の答え合わせ
オーブンから出てくる瞬間が、一日でいちばんにぎやかになります。

自分の手でこねた生地が、形になって出てくる。この手ごたえは、運動のメニューをこなすだけではなかなか生まれません。
できたという実感が、また来たいという気持ちになります。
焼けたパンは、お昼やおやつの時間に召し上がっていただきます。ベーカリーデイのもうひとつの看板が「特別なアフタヌーンティー」です。自分たちで焼いたパンをお茶と一緒に並べて、ゆっくり過ごします。

ご家族からは、こんな声をいただいています。
パンを焼くのが楽しみで 家でも久しぶりにオーブンを使うようになりました
80代の女性のご家族
外に出るのをためらっていた父が「明日はデイの日だね」と楽しみにするようになりました
70代の男性のご家族
いただいた感想をもとに、個人が特定されない形に整えています。
13人だから 一人ずつ見られる
ベーカリーデイの定員は13名です。地域密着型通所介護という種別で、人数が少ないことを大切にしています。

人数が少ないので、今日はどこまでできそうかを一人ずつ見られるのが強みです。一日の始まりも、体温と血圧を確かめて体調や気分をうかがうところからです。
2026年8月からは、作業療法士の定期的な巡回も始まりました。一人ひとりの体と気持ちの状態を見て、その方に合った作業を選ぶ。作業療法士との面談も、定期的に行っています。
パンを焼くのは週に数回です。ほかの日には、季節の創作や手芸・植物の世話・日記や読み書きなどの作業があります。
まずは匂いをかぎに来てください
「本人がまだ乗り気ではない」というご相談も、よくいただきます。
パン作りをしたことがない方も、料理は苦手という方も大丈夫です。まずは見学だけでもできますし、見学は無料です。
ベーカリーデイは、月曜から木曜の10時50分から15時50分まで。港南区と戸塚区は無料で送迎にうかがいます。電車なら、市営地下鉄ブルーラインの上永谷駅から歩いて来られます。
パンの焼ける匂いをかいでいただくところから、始めてみませんか。
お問い合わせは、ベーカリーデイ直通 045-392-7938 まで。受付は月曜から木曜の9時50分から17時50分です。どのサービスが合うか分からないというご相談も、お受けしています。




